古希になった医者のブログ

現役を引退し束縛が無くなった医者の好き勝手な話です

コロナ感染の流行はどう収束するか

2月ごろから国内で新型コロナウィルスの流行が起こり、東京など大都市では感染者数が特に増え続けて、連日大問題になっていますね。政府は外出の自粛や人の集まる店などの閉鎖を要請するなど、感染流行の阻止のために次々と対策を打ち出しています。その政府の宣言の期限である5月連休明けまでに流行はどうなっているか、注目されます。

ところで最近、注目すべきニュースをみました。今や感染者数世界一になってしまったアメリカのロサンゼルスで、住民の新型コロナウィルス抗体を調べたところ約4%(20~40万人相当)が保有者だったと言うのです。これは公式の(PCR検査で調べた)感染者数の数十倍になります。また慶応大学病院で、新型コロナウィルス感染症以外の新しい入院患者にPCR検査をしたとろ、その約6%が新型コロナウィルス陽性だったのです。いわゆる市中感染をしたが、無症状で気付かなかったようなのです。 

これは新型コロナウィルスが、表面に現れている以上に人々に流行している可能性を示していると思われます。しかもそんな人々は殆ど無症状で、感染したことに気付かないまま治ってしまうのでしょう。

そう考えると今後このウィルスは、多くの人に気付かれないまま感染が広がっていくのかもしれません。しかしその中で、少数の人は症状がでて希に重症になることもあるので、それが問題なのです。でも大丈夫、最近は様々な薬が試されていて重症化を防ぐ効果もあるようですから。 

それで将来はインフルエンザと同じような簡単な迅速診断キットも出来て広まると思うので、発熱患者が出たらインフルエンザか新型コロナ感染かを迅速診断して、それぞれの薬で普通に治療する…その内そんな風になるんじゃないかと思います。それが数ヵ月後か、数年後なのかは分からないですけど。

新型コロナ肺炎に医者はどんな治療ができるのだろう

私は内科医ですが呼吸器疾患が専門ではないし、患者を診察する臨床医という立場からも既に離れているので、実際にコロナ肺炎患者に対しどのような治療が行われているのかは知りません。しかし私がこの肺炎の患者を治療するとしたら、どの様にすべきだろうか考えてみました。

まず他に感染を広めることを防ぐ、これは基本なので色々するでしょう。では患者自身には何をするか、まず胸部レントゲン写真を撮ります。これで肺炎が無くて、その患者が普通に食事を食べられるなら、ベッドで安静にしているよう指示するだけでしょう。発熱があったり咳が出ていても、熱は身体の抗ウィルス反応であり咳も痰を出すためであって、それを止めると身体がウィルスと戦う力を削ぐ可能性があり、普通はしません。もちろん高熱や激しい咳で患者の体力が低下しそうなら、解熱鎮痛薬や咳止め薬を使いますけど。

レントゲンで肺炎像があり、患者がゼイゼイいって苦しそうなら、その血中酸素濃度を測ります(簡単にできます)。そして酸素濃度が低下してたら、酸素吸入の措置をします。そして試験的に、治療薬使用を考えるかもしれません。厚労省試している高インフルエンザ薬、抗エイズ薬などが手に入るなら、治験(患者を使って薬の効果などをしらべる実験)という形です。一時テレビで言っていたオルベスコという喘息の吸入薬は、その添付文書を見ると感染症患者には禁忌または慎重投与になっています。この薬をコロナウィルス患者に使った医師は、勇気があったんですね。

そして患者に高濃度酸素を吸ってもらっても、その結腸酸素濃度が正常にならなければ、人工呼吸器を使い中心静脈栄養という高カロリーの特殊な点滴をします。

医者にできるのは大体こんなところです。集中治療室にいる専門の医者なら、もっと良いことをしてくれる筈だと思うかもしれないけど、あまり期待しないほうが良いですよ。

新型コロナ肺炎の検査を受けたいですか?

まだまだコロナ肺炎COVID-19の流行は収まりそうもないし、テレビなどでも連日この病気についての報道が続いていますね。流行が始まったころは不安を煽るような無責任な報道も有りましたが、最近は少し落ち着いてきて、一般の人に役に立つ適切な情報も伝えられるようになった気がします。特に北海道知事が道民に伝えたことは、現時点での対処として最も適切と私は感じましたが、どう思われましたか。

その知事の話のポイントは、20歳代から40歳代くらいの若い人はこのウィルスに感染しても無症状化か軽い風邪症状程度が多いので、本人は知らずに周囲の人に移してしまうということです。だからそんな人は自宅で療養するか、外出するにしても最低限マスクをし人の密集する場所には行かないようにするべきなんです。

ところでアナタは、このウィルスに感染していないか検査を受けてみたいですか。無症状の人は、当然検査を受けるべきではないですよね。では軽い咳や鼻水などがなかなか治らない人は、どうでしょう。厚労省はそれが4日以上続いたら保健所などの相談センターに電話するように言ってます。でも電話したとしても、多分自宅療養で悪化しないか見ることなど指示されるだけで、検査はしてくれないと思います。実はそれが現時点では最も適切な指示なんですけれど、でも万一検査を受けられたとしたら、どうなると思いますか。結果は殆ど陰性となるでしょうが、万一もし陽性だったらどうしますか。アナタは隔離、周囲の濃厚接触者は何処かで待機して経過観察を受けなければなりません。でも隔離病棟に空きがなかったら、症状の軽いアナタは空くまで自宅で待機させられることになるかもしれません。結局持病も無く重症でもない若い人は、ほかの人に移さないように自宅で療養して回復を待つのが、現時点では一番良い方法なんです。

風邪気味だから検査して、ウィルスが陰性なら予定通り仕事や遊びに出かけよう、なのになぜ検査してくれないんだ、という考えは大きな間違いですよ。軽症の人は検査で陰性のことも時にあると報じられていますから。

新型肺炎が心配ですか?

まだまだテレビなどでは、国内で広がる新型肺炎の流行について報道が続いています。この肺炎をWHOは、COVID-19と名付けたようですね。ちなみに以前に流行って日本中大騒ぎになった新型インフルエンザは、Pandemic 2009 H1N1 と名付けられて、そのシーズンは大流行しましたが、今は毎年流行る普通のインフルエンザになっています。でもご心配なく。今のインフルエンザワクチンはこのインフルエンザ対策もされていて、予防注射をすれば新型インフルエンザへの免疫力も出来るようになってますから。

今回の新型コロナウィルスも、日本国内への侵入を防ぐことはもう無理だろうと前回お話ししました。今の日本人は、このウィルスに対する免疫を持ってないから、以前の新型インフルエンザと同じように、今後日本中で流行するのでしょう。でも少し安心なのは、この COVID-19 の致死率がそれほど高くないらしいからなんです。多分インフルエンザと同じぐらいなのでしょう。

ところで日本国内では、毎年インフルエンザで数千人の人が亡くなっていることを知っていますか。ただその大部分は、いわゆる老人専門病院に入院しいてるようなお年寄りで、元気に日常生活を送っている人は、まず大丈夫ですけどね。

だからこのCOVID-19 が流行しても、元気な普通の人は、何も怖がらなくて良いと思います。もし熱や咳が出たとしても、この時期に風邪ひくことは珍しくないんだから、すぐに病院に行って新型肺炎の検査をしてくれなんて、言わないほうが良いです。報道によれば、その検査は現在日本で一日数百件程度しかできないらしいですから、病院でただ風邪を引いただけの人に、その検査をしてくれる筈ないんです。それより家で栄養を取って安静にしているほうが、ずっと体には良いんです。

そのうち今のインフルエンザのように、予防注射や特効薬が作られると思いますから、冷静にそれまで待ちましょう。

新型肺炎の国内流行阻止はもう無理

連日テレビでは新型コロナウィルス肺炎大流行のニュースが流れています。中国では感染者が一万人以上になったとか、死者が百数十人なったとか伝えられ、日本政府は指定感染症や検疫感染症に指定して、強制入院を可能にしたり中国の流行地からの中国人の入国を禁止したりするようです。でもこの肺炎ウィルスを囲い込み、日本国内での流行を阻止するのはもう無理なんじゃないでしょうか。なぜなら既に日本国内で中国人旅行者とか観光バス運転手とか、各地で何人もが発症しているからです。

以前中国で流行したSARSと違って、今の新型コロナウィルス感染症では潜伏期間中にも他の人に感染する例が有るようです。つまりウィルスに感染しているが症状の出ない時期にも、ウィルスを排出していることが有るのです。そしてその後症状が出れば潜伏期間中にウィルス排出していたことになるのですが、そのまま症状が出ず自然に治癒してしまう人も居るはずなんです。だから日本各地で患者が出た時点で、その周囲にはウィルスを出すだけで症状は出ず、患者とはされない人がいると考えなければなりなせん。これは数年前メキシコから出たいわゆる新型インフルエンザが、水際で阻止されず、あっという間に日本国中に広まったのと同じです。

しかし幸いなことに、この新型コロナウィルス感染症の致死率はSARSより低いようです。そして今後の調査が進めば、多分致死率はインフルエンザとあまり変わらないという事になるんじゃないか、なんて気がするのですが。

でもインフルエンザと同じように、死亡率が高いのは糖尿病の人や高齢者など、免疫力の落ちた人です。だから今後のこのウィルス感染対策として一般の人に必要なことは、自分の免疫力を低下させないことだと思います。

自分はそんなに年寄りでもないし持病もない、なんて思っている人も、過度のストレスー精神的なものだけでなく寝不足や過労、二日酔い、体を冷やすことー偏食や痩せすぎ、などは十分注意した方が良いです。

「がん」になるのが普通です

「がん」は怖いし、なりたくないと殆どの人は思っているでしょう。でも「がん」というのは、カゼとか腹下しとか日常によくある軽いものを除けば、一番多い病気ですよね。国立がん研究センターのホームページを見ると生涯で「がん」になる確率は男性で62%、女性では47%となっています。つまり死ぬような大きな病気の中では「がん」が一番多いんです。一番多いのを普通とすれば、「がん」になるのは普通ですよね。

でも「がん」は死ぬ病気だから特に怖い、と思う人が多いのでしょう。ところが同じホームページには、「がん」で死ぬ確率は男性25%、女性16%と出ているんです。つまり「がん」になっても、その半分以上は「がん」ではなく、それ以外の病気で死んでいるんです。「がん」になったら苦しんで、必ず死ぬ、なんてのは昔の常識ですね。

では「がん」になっても死なない人と、死ぬ人の差は何でしょう。どこにできたのかという「がん」の種類の差も有ります。でも小さいうちに、早く見つかった「がん」ほど治るということは、当然知ってますよね。

つまり「がん」になるのは普通なんだから、「がん」で死なないようにすることが大事、ということです。

そのためには、がん検診をキッチリと受けることを、まずお勧めします。

 

インフルエンザの予防注射

今年はインフルエンザの流行が早く始まっていると言われ、早くワクチンを打たなくてはと焦っている人もいると思います。でも今のインフルエンザワクチン接種って、医者から見ると何か変なんです。何故かって? それをお話しします。

インフルエンザの流行が始まったというニュースが流れると、学校がインフルエンザ流行のために学級閉鎖など始めたことも報じられますよね。お分かりのようにインフルエンザは、まず小学校の子供などから流行り始めるんです。何故なら多くの子供はまだインフルエンザに罹ったことがないので、ウィルスが簡単に広がってしまうんです。だから子供に十分な免疫力を付けるため、ワクチンは二回打たなければならないですよね。

そのあと学校で流行っているウィルスを子供が家庭に持ち帰り、大人にうつすわけです。でも過去にインフルエンザに罹ったことのある大人が殆どなので、抗体(抵抗力)ができやすく重症になることはまず有りません。だから大人はワクチンを一回打っただけで十分免疫ができるんですね。

でも老人になると全般的に抵抗力が低下するので、インフルエンザに罹ると重症化することが有ります。つまりインフルエンザで死ぬ人の殆どは年寄りなんです。インフルエンザと言うのはまず学校で子供たちに流行し、その後その流行が老人の施設まで及ぶと、入居しているお年寄りが肺炎で死ぬ率が高まるのです。今のインフルエンザというのは、老人にとっては死ぬことも有る危険な病気なのです。

事実小学校での予防接種が義務化されていた時期には、老人がインフルエンザで死ぬ数は減っていたようです。だからインフルエンザ予防接種が本当に必要なのは、小学校での流行を防ぐため義務としての集団接種と、老人施設にいる年寄りなんです。

今は7割ほどの子供が任意で接種を受けているようですけれど、一回3500円ほどを二回接種するのは親の負担も少なくないですよね。以前のように小学校で定期接種として全員にワクチンを打てば、流行も防げるし親の負担も楽になると思うのですが。