古希になった医者のブログ

現役を引退し束縛が無くなった医者の好き勝手な話です

マスクの誤解

新型コロナウィルス流行を防ぐため、マスク着用が言われるようになって、もう半年以上たちました。でもいまだに多くの人が、マスクについて正しく理解していないように思えます。というのも猛暑の季節になった今、コロナ感染防止のためにマスクをするべきか、熱中症予防のためマスクを取っても良いのか悩む、なんて人がいるようだからです。それで誰もが理解しやすいように、基礎的なことから解説しようと思います。

まずコロナウイルスはドコにいるのか。殆どが感染した人の唾、鼻水の中で、他には大便中に少しいます。そのウィルスの数は、感染した人の熱・咳などの症状が出る前後の数日間が最も多いようで、その時期の唾などが別の人にうつす可能性大となります。

人はどんな時に唾を飛ばすか、ただしゃべるだけでも(大声では特に)口から1メートル位、咳くしゃみをすれば2メートルも前に飛ぶんです。唾の中にウィルスがいれば、一緒に飛びますよね。そして口から飛び出した唾の粒の多くは(2メートル以内の)床に落ちますけど、とても小さい唾の粒は、しばらく空中に漂ってから落ちるんです。

その唾の中にウィルスがいたらどうなるか、唾が落ちた床やテーブルの表面がツルツルなほど、そのウィルスがまた別の人の口に入って感染を起こす力が続くようです。分かり易く言うと、服や紙の上より、金属やプラスチックの上に落ちたウィルスの方が長く生きている(?)のです。(どのぐらい長く?…正確には分かりませんが半日ぐらい?)そのウィルスの付いたテーブルやつり革やドアノブに別の人が触ると、手指に着いて感染を起こすのです。だから手洗いやアルコール消毒が大事なのです。

では唾の中にウィルスのいる人が、その唾を飛ばさない為にドウすべきか。くしゃみをしても唾のしぶきを通さないマスクをします。暑くなって薄い布地のマスクを手作りしたら効果は期待できないかも。でも不織布マスクはしぶきをかなり止めるようですよ。

つまり唾の中にウィルスの居ない貴方は、マスクをする必要がありません。しかし最近の研究によると、特に若い人で感染してウィルスがいるのに、無症状で気付かない人が居るようです。だから自分はウィルスなんて居ないと思っている貴方が、知らずに唾でウィルスを撒き散らしているのかも知れません。やっぱり全員がウィルスを持っていると思って、しぶきを通さないマスクをすべきでしょうね。

でも常に2メートル以上離れていたら唾のしぶきは飛ばないので、マスクを外しても大丈夫です。公園なんかの広い場所だったら、暑い中に我慢してマスクをしなくても良いと思います。

しかし部屋の中ではどうでしょう。その中の誰かの唾にウィルスがいて、その人がマスクをしていなかったら、その唾の小さい粒はしばらく空中を漂います。その部屋が密閉されて空気の入れ替えをしなかったら、その粒の中のウィルスを吸い込んで感染してしまうかもしれません。だからその漂っているウィルスを吸い込まないためにマスクをする、と考えている人が多いのかもしれません。でもそれは誤解です。

ウィルスを吸い込まないためには、空気は楽に通るけどウィルスは通さないという材質のマスクを作らなければなりません。でもウィルスはとても小さいので、それは無理なんです。

ところが医療現場では、N95という規格のマスクを感染予防に使っています。これは、0.3㎛の大きさの粒子を95%以上通さないという規格です。でもコロナウィルスの大きさは、0.1㎛なのです。しかしウィルスは空中で実際は小さいゴミのような粒子に何個も付着して漂っているので、これでも通さないだろうと考えられているのです。

このマスクは目が細かいため空気が通りにくく、従って脇の隙間から息が漏れ易いものです。漏れてしまっては効果がないので、完全に密着されているかのテストが必要です。でも顔の形が様々なので、誰もが密着させられるというのは難しいのです。それに感染しない効果が期待できる密着したマスクというのは、息苦しくて長時間の使用はかなり苦痛なものですよ。

マスクは自分が感染しないためでなく、他の人に感染させないためのものだと理解してください。更にコロナウィルス感染流行のために三密を避けることが大事たということもまた、ご理解いただけたと思います。