古希になった医者のブログ

現役を引退し束縛が無くなった医者の好き勝手な話です

インフルエンザの予防注射

今年はインフルエンザの流行が早く始まっていると言われ、早くワクチンを打たなくてはと焦っている人もいると思います。でも今のインフルエンザワクチン接種って、医者から見ると何か変なんです。何故かって? それをお話しします。

インフルエンザの流行が始まったというニュースが流れると、学校がインフルエンザ流行のために学級閉鎖など始めたことも報じられますよね。お分かりのようにインフルエンザは、まず小学校の子供などから流行り始めるんです。何故なら多くの子供はまだインフルエンザに罹ったことがないので、ウィルスが簡単に広がってしまうんです。だから子供に十分な免疫力を付けるため、ワクチンは二回打たなければならないですよね。

そのあと学校で流行っているウィルスを子供が家庭に持ち帰り、大人にうつすわけです。でも過去にインフルエンザに罹ったことのある大人が殆どなので、抗体(抵抗力)ができやすく重症になることはまず有りません。だから大人はワクチンを一回打っただけで十分免疫ができるんですね。

でも老人になると全般的に抵抗力が低下するので、インフルエンザに罹ると重症化することが有ります。つまりインフルエンザで死ぬ人の殆どは年寄りなんです。インフルエンザと言うのはまず学校で子供たちに流行し、その後その流行が老人の施設まで及ぶと、入居しているお年寄りが肺炎で死ぬ率が高まるのです。今のインフルエンザというのは、老人にとっては死ぬことも有る危険な病気なのです。

事実小学校での予防接種が義務化されていた時期には、老人がインフルエンザで死ぬ数は減っていたようです。だからインフルエンザ予防接種が本当に必要なのは、小学校での流行を防ぐため義務としての集団接種と、老人施設にいる年寄りなんです。

今は7割ほどの子供が任意で接種を受けているようですけれど、一回3500円ほどを二回接種するのは親の負担も少なくないですよね。以前のように小学校で定期接種として全員にワクチンを打てば、流行も防げるし親の負担も楽になると思うのですが。